農園縁起その1

生まれてこの方、農業には全く縁がなかった。田舎で育ったにも関わらず、家には畑がなかったことから、農作業というものをほとんど経験したことはなかった。

家に畑はなかったが、家の裏口には毎日のように両手をまわしてもさらに余るほどの大きなざるに山盛りの野菜が届けられた。どうがんばっても食べきれない量の野菜だ。そういうわけで畑仕事をする必要も全くなかった。

それでも、なぜか通っていた小学校では学年ごとになにがしかの野菜をつくる授業というものがあり、じゃがいもとさつまいも作りの実習、そしてなぜがお茶摘み大会なるものがあったことから、少しだけ土に触れる機会はあった。

けれども小学生のころか頭痛持ちで、午後になると強い頭痛に襲われることが多かったことと、貧血気味だったこともあり、持久力を必要とされるような運動や、長い間立っていること、炎天下での作業などが苦手で、外に出るのが億劫なことも多かった。

当時うち以外の家はほとんど畑を持っていて、同級生たちも季節ごとの農作業を手伝って忙しくしていた。今思えばびっくりだが、稲刈りの時期になると数人の同級生はお手伝いがあるからと早退していた。何故かそれがとても大人っぽく見えて、田んぼがあるなんてかっこいいなあとうらやましく思っていた。

そんなわけで農作業をする大人っぽい子供に憧れていた私を、同級生が時々農作業に誘ってくれた。稲の収穫後のはさ掛けなどを手伝わせてもらったことがあったのだが、いかんせん普段農作業をやったことがない私は全く使いものにならず、もの悲しい気持ちになったのを覚えている。それでも農作業自体はとても楽しかった。

その使えない度合いは今も全く変わらず、草一本抜くことができない。自然の中で過ごすのも、アウトドアイベントも大好きだし、器用な方ではあるのだが、力がないのと、捻挫をしやすいのが原因して、あまり力を必要とする作業ができない。

その代わり、昔からリサーチして必要な情報を集めたり、解決策を見つけ出すことは得意だし、何もないところで生き延びるとか、道具がない時に何かを創り出すとか、そういういう智恵は働く方だ。

だから私は、考えたり、戦略を立てたりすることに徹して、人にやってもらう方がいいのだと思っているし、友人達からもそう思われている。ある年齢になった頃、御簾の内側でお香を燻らせながら、勉強をしたり、歌を詠んだり、随筆を書いたりしつつ、四季折々の宴を庭で催し、自然を愛でたり楽しんだりする時には牛車で外出して・・・というような平安時代の暮らしを知り、平安時代の貴族に生まれればよかったのにと本気で思ったくらいだ。

だから田舎に暮らすとしても、お米や野菜はきっと分けていただけるだろうし、ちょっとした家庭菜園ができればいいな。というくらいに考えていたし、Pにも友人達にも「Lちゃんって、農業に合わないね。」と言われていた。

ことの顛末はまた後述するが、少し広い面積で畑をやろうと考えるようになった後、私をよく知る経営者の方にそのことをお話すると、「やっぱりLさんは考えるだけで、農作業は他の人にやってもらうんでしょ?」と聞かれた。その際も「そうそう。そうなんですよ。私畑やってる場合じゃないし、弱っちいので何にもできないし、暑いのも寒いのも嫌いなので、家の中から拡声器で指示出してやってもらおうと思ってるんです。」とお答えした。その方は「そうだろう。そうだろう。」といった趣で何度も深く頷きながら、「やっぱそうだよね~。」とおっしゃっていた。

そもそも幼少期の憧れを除いては、その後の人生の中でもいわゆる農的暮らしや、パーマカルチャーや、家庭菜園やガーデニングなどなど、畑や土に関することをやりたいと思ったことは一度もないし、憧れたことも、勉強したこともない。

暑いのや寒いのが苦手だったり、力がなかったりということもあるが、何故だか作為的というか故意にというか、こちら側が何らかの働きかけをして、自然に手を加えるということや、自然から何かを得ることを期待して関わるということに関心がなかったからということもある。

ただ、自然や植物や生物自体には関心があり、生物学や植物学なども大好きで、田舎暮らしや自然の中での暮らしをしたいと思っていた。

話は戻るが、とにかく最初は家庭菜園程度でと思っていた。それがなぜもう少し広い面積でと考えるようになったのか?そして最終的に、もう少し広い面積どころか、結構広い面積でと考えるようになったのか?それにはいくつかの理由があった。

長くなるので続きはまた時間のあるときに書きたいと思う。

image田舎がなくなった日のこと☆

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